企業ドキュメント:徳島大学病院 様 ~第3部~
徳島大学病院様 大学病院が変わる:第3部
大人だから学びたいことがある
医療技術が進歩したおかげで治療期間は短縮したが、その反面診る患者数は増加し、業務負担が大きくなっている。医療費負担に頭を抱える地方からの人員増は期待できず、医師や看護師の不足が深刻化している。突き付けられた現状の中で、困難を乗り切るにはこれまで以上の現場結束による「チーム医療」が必要不可欠だ。
全職種の念願「連携」
徳島大学病院(徳島 徳島大学病院(徳島市)は、医師や看護職、医療技術職などの組織横断教育を図る「キャリア形成支援センター」を昨年12月に開設した。各部門が患者から寄せられた問題事項を共有し、共同の研修などを通して連携発展につながるプログラムづくりをするのが狙いだ。
同センター長の任に就いた医学博士、赤池雅史さんは「急務だった」と話す。日勤の中で事故を水際で防ぐ「ヒヤリハット」事例は後を絶たず、現場からも「職務の連携はすぐにでも」という声にあふれていた。
「入学したての学生もベテラン医師も、いい職場環境は『コミュニケーションがとれている』が第一条件という。それが実際にはできていなかった」と赤池さんは言う。大病院は「医師は医師、看護は看護」と、別々に組織が構築されている伝統を持つ。連携は必要だが、現状の「縦割り」状態をどう交わらせていくのか、同センターの課題は多い。
コミュニケーション学習
トラブルの大半は、コミュニケーション不足が原因だった。職場間の連携や引継ぎなどで一言伝えるか書き示せば起きなかった伝達ミスが、後々大きな問題へと発展する。
いち早く手を打ったのは看護部だった。組織運営上のコミュニケーションレクチャーを指導する大阪市中央区の「ワールドユーアカデミー」(仲村恵子社長)を招き、研修で同社の「COREトレーニング」を取り入れている。
他者と自分とのやり取りを第3者的立場から見るなどの訓練が積まれ、「自分と他人」「所属と他部署」の違いがはっきり見え、お互いが認め合えるような空気ができつつあるという。
同副センタ―長の鈴記洋子さんは「安全性の向上につながっているというのは感じる。生活習慣病患者など多分野にまたがる治療となる場合、連携を深めるともっと効果が増していくと思う」と実感をかみ締める。
若手育成システムへ
同センターが「チーム医療」を成立させる大きな目的の一つが、若手育成システムの強化。
2004年に導入された医師臨床研修制度により、研修医らが出身大学やその関連病院以外へも進路をとりやすくなった。それにより都市病院へと進む卒業生が増加し、地方の医師不足を招く一因と指摘されている。
赤池さんは「従来の縦割り組織だけでは、診療現場で求められる医療人の教育に十分対応できなくなっている。だから研修制度の充実で『チーム医療』というスタイルを打ち出せば、国内有数の病院となるはず」と見る。
センター開設、半年余り。その間数回、医師、看護師、臨床検査技師、栄養士らが合同でシミュレーション研修を実施した。「職種を超えた視点が得られた」「他分野の経験が集まってより高度な臨床(実践)ができるのでは」との声が次々上がる。
大学病院の職員約1,600人が一丸となったとき、患者となる地元住民にとっても地域の誇りとなる病院となることだろう。